夜の海は、昼間と違ってとても暗く、月や星の淡い光だけが海面をそっと照らしています。

その淡い光に照らされてキラキラと光る海面に、男の子はそっと顔を出してみました。
仲間やお母さんの眠る島の入り江の黒い影が、遠くの方にかすかに見えました。
いつも、群れから離れてひとりで泳ぎ出すときは、とてもワクワクしました。
特に、真夜中にこうして群れを抜け出すときには、昼間に抜け出すときの何倍も胸がドキドキします。
お母さんに見つかったら、またたくさんお小言を言われてしまうことでしょう。
それでも、男の子は、夜に群れを抜け出すことがやめられなくなっていました。

海の上をすべるように吹き抜ける柔らかい風が、ふぅっと男の子の顔を撫でていきました。
その風を少しくすぐったく感じながら、男の子は夜空を見上げました。
夜空には、満点の星が見渡す限りに広がって、それらの一つ一つが
チカチカと囁くようにきらめいています。

男の子は、夜の星空を見るのが大好きでした。
大小様々、色も光の強さも、似ているようで何一つ似ているものがない星々は、
いつまで見ていても飽きることがありません。