先輩が悲しいとあたしも悲しい。



だからこれはあたしのためでもあるんだ。



「先輩が言いました。自分の母親は血縁上でも戸籍上でもたった一人だって」

「それは唄子(ウタコ)を避けてるだけじゃないのか」

「唄子…?」

「再婚相手だ。音弥は唄子や弟の存在を認めたくない。だから反発するんだろ」



先輩はそれだけで反発するような人じゃない!!



「私はね、唄子とその子に新しい家庭を作ってやりたいんだよ。今まで外で家族らしい事をしてやれなかったから、尚更ね」

「……じゃあ先輩には、家族らしい事をしたんですか。家族である先輩に、何かしてやったんですか」



あたしは泣きたいのを我慢した。