圭吾さんは校門に向かって歩き出した。


私はまた後を遅れないように付いて行く。


すると圭吾さんは不意に止まって、振り向かずに、左手だけを後ろにつきだした。


私は駆け寄って、その手に自分の右手を滑り込ませた。


「ありがとう」

私は握った手に力を込めた。すぐに圭吾さんも握り返してくれる。


私が圭吾さんを見上げて、うれしくて笑いかけると、圭吾さんも目元と口元がゆるみ、ふっと笑ったような気がした。


また手をつないで歩く私たちに会話はなかった。


何も言葉はないけれど、それだけで私は嬉しかった。


つなぐ手があったかくて、幸せで、あんなに忘れようと思っていたのに、もう絶対に忘れられなくなりそうだった…