「俺は強くなんかねえ。弱いから喧嘩すんだ。俺はお前より弱い・・・」

その声は、ウルフとみんなが恐れる人とは思えないほど弱々しい声だった。


消えそうなほどに切なく聞こえた。


「圭吾さんは弱くないよ」


私はその弱々しい圭吾さんの右手を両手で握った。


「圭吾さんの手は魔法です。私を安心させてくれる魔法の手。こんな魔法の手を持っている人が弱いわけないよ。でももし弱いとしたら、それはなにか辛いことがあっただけ。その辛いことを乗り越えたらもっと強くなれる。私はそう思います」


私は圭吾さんの右手を握る手に力をこめて、圭吾さんの目を見て言った。


そして圭吾さんの口元が緩んだと思ったら、私の手の中から圭吾さんの右手がすり抜け、私の後頭部へとまわってきた。

左手は背中にまわっている。


私は圭吾さんに抱きしめらていた。