―――5年前


この海に最初に来たのは、クラスの打ち上げの後の事
カラオケで歌って、ファミレスでゴハン食べて、その後海に、来た

もちろん、雨荻もいた

話す機会がなかったから今まで話していなかった

俺はもう、雨荻を完全に意識していて、胸がチクチクする気持ちだった


「花火しよーっ」


クラスの中のここから家が近い誰かがそう言って、
花火とバケツを取りに家まで戻った

5分ぐらいしたら戻ってきて、みんなで花火をしていた

その頃はもう8時ぐらいになっていて、30人いた人が10人程度になっていた

雨荻も、残っている

「あたし、線香花火が一番好き」

雨荻はそう言って俺に話しかけてきた

「人、少なくなっちゃったね」

「うん。俺はねずみ花火かな」

「ふーん。実はあたしそんな花火の種類詳しくないのよね」

「実は、俺も」


「花火なくなってきたよ」

花火の数が段々少なくなってきた
あと残っているのは数本の花火と線香花火のみ

「じゃあ、早く線香花火しよう」

「澪…線香花火好きなんだ」


数本の花火を処理した後、みんなは線香花火に火をつけだした

「この時間が、好き」

俺が、どういうこと?という顔をすると、雨荻は俺のほうを見て、

「少ししかない時間を、見つめてるっていう、感じ。わかる?」

「わからない」

雨荻は苦笑した