―――現在


ピンポーン

家のチャイムが鳴った


「はい」

ドアを開けると、澪が立っていた

いや、ドアを開けてすぐ澪だと判断するまでには少し時間がかかった

髪の長さとか、匂いとか、雰囲気とか、昔と変わらなかったけれど
それにますます磨きをかけて、眩しかった


「久しぶり」


澪は、微笑んだ

その笑顔もまた、昔とは変わらなかったけれど、
昔以上に輝いていた


「久しぶり…どうしたの、急に?」

「どっか行かない?」


澪は俺の質問には答えなかった


「海行きたいな。昔みたいに、チャリ乗って」

「今は…バイクあるけど」

「乗る!」


僕はメットを澪に渡した

澪はバイクの後ろにまたがって、俺の服の裾を掴んだ


「落ちないように気をつけて」

「大丈夫だってー。子供じゃないんだから」


背中から、澪の温もりが伝わる

この感触、覚えてる

覚えてるというより、身体に染み付いている