―――5年前
いつも、大した話じゃない話をするときくる喫茶店がある
今日も、そこに呼び出された
だから、大した話じゃないと思っていた
でも、違うかった
澪は先に来ていて、カフェオレを飲んでいた
「どーした」
「…あたしね、カナダの大学行くの」
俺たちは付き合いだしてもう、2年経っていた
高1の時出会って、もう大学の話になっている
「そか…」
「で、ね。…別れてほしいの」
え?
今、何て?
言葉にならない
「何…で」
「あたし、遠距離とか無理だし」
「俺のこと嫌いになった?」
「違うよ」
「じゃあ、何で」
みっともないと思う
別れの時、こんなにもすがりつくのか、俺は
「…だって、手紙とか電話とか、メールとか…あたし、そんなマメじゃないし。それに、縛られるの嫌」
そう…澪は、そういう人だ
いつも、自由奔放で空を飛び回っている、鳥に似ている
「…わかった」
俺も、よく承諾したな
「ごめんね」
「ごめん、なんて言うなよ」
「…じゃあ、あたしそろそろ行かなきゃ」
「…うん」
これが、5年間の別れの最後になった