―――現在

「…おめでとう」

声が、震えないように言ったつもりだったけれど、
やっぱり震えた

「ありがと…」

俺は、何を期待していたんだろう
期待する理由なんて、何もなかったのに

「…どんな人?」

傷つくのをわかっていて質問する俺

「優しい…人よ。5歳年上なんだけど、子供っぽくて」

「向こうで…出会ったの」

「…うん、ごめんね」

澪は、カナダの大学に入学することになり、
4年間、ずっと行っていたらしい

だから、帰国していたなんて全然知らなかった

「1年前、帰国していたの。連絡遅れてごめんね」

「カナダ人?」

「えっ?…あぁ。ううん、日本人。彼も留学していたんだけれど、カナダ気に入っちゃって在住してる」

そう…と俺は呟いた

嫌な沈黙が流れる

「…ごめんなさい…5年前のこと」

澪がゆっくりと謝った