でも誰かは、思い出せない。

どうしっちゃったんだろう。

記憶がパズルの1ピースのように、抜けているみたい。

・・・・・・

分かんないよ・・・

でも誰も教えてはくれない。

皆が、秘密にする。

「ねぇ、教えてよ」

「何がよ」

「あたしが、分からなかった聖也は誰?」

「・・・教えてあげたいけど、羽衣が自分で思いださなきゃいけないのよ」

あれから、聖也は毎日あたしの元へ来る。

聖也は、とても親しみやすく、すぐに仲良くなれた。

でも、抜けた記憶は戻らない。

・・・
友達の詩織は、覚えている。

でも、聖也の事に関しては思い出せない。

思い出そうとしても、頭が痛くなる。

もう、退院してもいいらしいから、あたしは明日退院する。

「退院おめでとう」

「ありがとう」

「あのさ、・・・やっぱいい」

「?」

「なんでもないから」

「うん」

いつか戻って欲しい記憶。

聖也との、多分・・・きっと大切な記憶。

早く、戻ってよ。

毎日毎日、そう願う。