懐中電灯で照らされる。
光から見えるのは、青い警官の服。その制服をみて、すぐに不良たちは逃げて行った。

「またあいつらか……しょうがないガキ達だな」

ぶつぶつ言いながら、彼らが立ち去った方向に目を向ける。呆れているようだ。すずめは突然現れた警官に呆然としていた。誰だろうか。警官という者もしらないすずめには、なぜ彼らが逃げたのかは分からない。けれど、いい人なんだろうなという事は分かった。

「お嬢ちゃん、大丈夫?」

優しく彼は歩み寄った。まだ若く、冬矢よりも年若い。人懐っこい笑みを浮かべていた。

「うん……ありがと」

「でも、こんな深夜に出歩くキミも、悪いんだからね」

優しく警官はたしなめる。冬矢と似たような言葉にすぐにすずめはむくれた。なんで今日はそればっかり言われなくてはならないのだろうか。危険な目にあっておきながらも、すずめには外の世界はそれ以上に魅力的だった。

「……むくれてもだめ。キミ、家はどこ? 送ってあげるから」

「えー……」

「文句を言っちゃダメ。言う事聞いてよ」

警官はそう言い聞かす。すずめはまだむくれていたが、助けてもらったということもあり、しばらく渋った後でうなずくしかなかった。

「決まり。家はどこかな?」

「喫茶店『魑魅魍魎』」

「ああ、あの結構人気の喫茶店。キミそこの子なんだ。へぇ~……」

まだすずめはむくれるも、彼に促されて自転車に乗り、出発した。