「へっ?」

じぃっと、不良たちはすずめの顔を囲ってのぞきこむ。突然の出来事にすずめは呆然として、彼らの視線に戸惑っていた。

「あの、なんですか?」

見知らぬ人間に見つめられているという状況に、すずめは上目遣いで彼らを見上げる。怖いわけではないが、どうしていいのか分からないのですごく困惑していた。

「キミ、可愛いんだね」

「今一人なの?」

「一人ならさ、俺らとちょっと遊びに行こうよ。楽しいところたくさん知ってるから」

すらすらと彼らを言葉をつづけて行く。
どうやらすずめをナンパしているようなのだが、こんな夜中に健全な誘いではない。まだそれはすずめは知らないものの、どこか怪しさは感じていた。

「でも、知らない人についていっちゃだめって……冬兄が」

思わず口から出た冬矢の名前。そんな自分に驚いてしまう。
だが彼らはまだ諦めが悪い。

「そんなつれないこと言わないでよ」

「ばれなきゃ大丈夫なんだから」

「てか、冬兄って誰?」

ニコニコと笑顔を本人達は笑っているつもりだが、はた目ではかなり思惑が見え隠れしているニタニタ笑いになっていた。すずめも少し不安を感じだした。

「でも、やっぱりごめんなさい」

「そう言わずに、さ」

もう一度断ったら、そのうち一人がすずめの肩に手を回した。小さな彼女の体はすっぽりとその腕の中におさまる。

「えっ? あの……」

「いいからいいから」

そのまま、強引に力づくで連れて行かれそうになる。そこでようやく抵抗しても、まだ力の弱いすずめにはその腕を振り切ることができなかった。そのまま知らないところへ連れて行かれるかもしれない。初めて外の世界が危険だと実感した。

「放してくださいッ!」

「いいから、いいから」

抵抗しても、何をしても数が多い。何をしたって、どうしたって、振り切れなかった。
心の中で冬矢の名前を呼ぶ。強く強く助けを呼んだ。


「おい! そこでなにをしているんだ!」

そんな時に、男の声が割って入った。