「冬兄なんか、死んじゃえ!」
「すずめ、待ちなさい!」
真夜中、すずめが店から飛び出した。
冬矢がそれを追っても、すでに彼女は夜の闇にまぎれて消えていた。
「ああークソッ!」
頭をかきむしって、冬矢は乱暴に座敷に座り込んだ。
客たちは二人の先ほどまでのやり取りに目をパチクリ。そのままじっと冬矢を見ていた。冬矢がその視線に気づき、ギロリと氷の視線を突き刺していく。すぐに客たちは目線をはずした。
二人は派手な喧嘩をした。
理由は、珍しいものではなく、よくある内容だったのだが、今回は特に派手で激しかった。冬矢はカチカチと爪で机をたたく。一触即発の空気。関わらない方がいい。触れない方がいい。
一方のすずめはため息交じりに夜の商店街を歩いていた。なにをしようにも、暗い夜中。自分が見る外の世界はこれしかない。夜、夜、夜。闇の中でしかこの町を歩けない。いや、それは有事の場合で、結局はこの夜の街でさえまだ十分に歩けない。
「冬兄のバカバカ! ……なんで許してくんないの……」
目にはうっすら涙がにじむ。でも泣くことはない。
冬矢が悪いのだから、泣く理由なんかない。そう言い聞かせてまた夜の商店街を歩く。
公園に差し掛かる。ブランコに座り、ゆっくりとこいでいく。
「……バカバカ」
ブランコが風を切る。夜の冷たい風が頬をなでる。
ゆらゆら、
景色が動く。夜の世界が彼女のすべてだった。
昼の世界をすずめはしらなかった。ずっとずっと、鳥カゴの中。夜になっても、店の中だけ。外の世界を、冬矢は見せてくれなかった。危険だからと、まだ弱いすずめのことを思ってのことだけれど、それでも過保護だし、やりすぎだと思って反発した。それが喧嘩の発端。
ブランコは強く揺れる。強く風が当たる。
風をこんなに感じるのは久しぶり。
「えへへ……」
ちょっと楽しくなってきた。
やっぱり外の世界は楽しい。すっごく楽しい。
笑みが自然に漏れ出た。
その時、
「キミ、何してんの?」
町の不良に無理やりブランコを止められた。
「すずめ、待ちなさい!」
真夜中、すずめが店から飛び出した。
冬矢がそれを追っても、すでに彼女は夜の闇にまぎれて消えていた。
「ああークソッ!」
頭をかきむしって、冬矢は乱暴に座敷に座り込んだ。
客たちは二人の先ほどまでのやり取りに目をパチクリ。そのままじっと冬矢を見ていた。冬矢がその視線に気づき、ギロリと氷の視線を突き刺していく。すぐに客たちは目線をはずした。
二人は派手な喧嘩をした。
理由は、珍しいものではなく、よくある内容だったのだが、今回は特に派手で激しかった。冬矢はカチカチと爪で机をたたく。一触即発の空気。関わらない方がいい。触れない方がいい。
一方のすずめはため息交じりに夜の商店街を歩いていた。なにをしようにも、暗い夜中。自分が見る外の世界はこれしかない。夜、夜、夜。闇の中でしかこの町を歩けない。いや、それは有事の場合で、結局はこの夜の街でさえまだ十分に歩けない。
「冬兄のバカバカ! ……なんで許してくんないの……」
目にはうっすら涙がにじむ。でも泣くことはない。
冬矢が悪いのだから、泣く理由なんかない。そう言い聞かせてまた夜の商店街を歩く。
公園に差し掛かる。ブランコに座り、ゆっくりとこいでいく。
「……バカバカ」
ブランコが風を切る。夜の冷たい風が頬をなでる。
ゆらゆら、
景色が動く。夜の世界が彼女のすべてだった。
昼の世界をすずめはしらなかった。ずっとずっと、鳥カゴの中。夜になっても、店の中だけ。外の世界を、冬矢は見せてくれなかった。危険だからと、まだ弱いすずめのことを思ってのことだけれど、それでも過保護だし、やりすぎだと思って反発した。それが喧嘩の発端。
ブランコは強く揺れる。強く風が当たる。
風をこんなに感じるのは久しぶり。
「えへへ……」
ちょっと楽しくなってきた。
やっぱり外の世界は楽しい。すっごく楽しい。
笑みが自然に漏れ出た。
その時、
「キミ、何してんの?」
町の不良に無理やりブランコを止められた。