いきなりの告白。
真剣な面持ちで見つめる洋子に、秀明は目を合わそうとしない。

そうだとは思わなかった。
父が死んで、恭子の元でしばらく住んでいた時期に、洋子が来た。
そのころから、友人の様にしてきた洋子がまさかこんなことになるとは思ってなかった。
洋子は詰め寄る。秀明はさがる。

「まあ、とにかくはその気持ちは感謝する、けど断る」

目を合わせることなく断った。
その態度で、洋子の眉間にしわがより、秀明の両肩をつかむ。

「ちゃんと目を見てください!」

そう言っても、秀明は顔をそむける。さらに洋子は苛立ち、秀明の額に手をかざした。

「四の子ッ」

一匹の管狐が現れた。
その管狐は秀明の耳から秀明の頭へと入り込んだ。
実態のない妖気の塊が頭の中を巡る。何をされているのか分かったときにはもう遅い。


「変化……」


出てきた管狐が洋子に情報を伝えて、洋子は変化をした。
長い黒髪、茶色がかった目。幼い顔立ち、色気もなにもない童顔の少女がそこにいた。


「……っ」

洋子のその化けた姿に、秀明は先ほどまでそらしていた目を放せなくなった。
彼が知る限りの彼女がいた。管狐の四の子の神通力は人の記憶を読む。
秀明の記憶から『彼女』の記憶を抜き出し、洋子は変化した。


「む……睦美」


秀明の思い出のままの睦美がそこにいた。
陽の母であり、成人を迎える前に鬼に殺された彼女がそこにいた。