そこで、洋子は動いた。
音もなく起き上がり、眠っている陽の額に手を置いた。

「……六の子」

管狐を呼び寄せた。
ただ彼女の眠りを一層深くしただけの催眠術にすぎない。
こうして陽を眠らせ、洋子は部屋を出た。




「? ああ、起きてたか。悪いな、頼んで」

「いえいえ。毎日お疲れ様です」

歩み寄る洋子に気付き、布団から秀明は起き上がった。何のことも感じずに、ただここに陽と留守番をさせたことに関して詫びをいれた。
洋子は気にしていないとほほ笑んだ。


「どうした?」

「少し、お話ししたくて……」

「……まあ、疲れてるから手短に頼む」

だがどこか異変を感じ、少し聞いてみる。
話があるとだけ洋子は答え、枕元に座った。全く何の覚えもないまま、秀明はそれを許した。



「私……」

洋子はぐっと、強く手を握り締める。
ずっと言うに言えなかった想いを口にした。



「ずっと前から、好きです。秀明さんの事」





「……」

突然の告白に、秀明はとっさに身を引いた。
それでも洋子は詰め寄る。

「陽が生まれた時に、やっと自分の気持ちに気付いたんです」

「ま、待ってくれ……」

突然の告白、続ける洋子に、秀明は戸惑いを隠せない。
だが、洋子は引き下がることをしなかった。

今を逃せばもう機会がない。
今しか想いを告げる時がない。

洋子は自らの気持ちを語った。