管狐の菅洋子は、陽の家に外泊をしていた。

「……くぅ……くぅ……」

時刻は深夜1時。
洋子の隣では陽が幼い寝息をたてて熟睡している。


洋子がこうして外泊する理由は、
秀明に、今日は帰りが遅いから陽と一緒に留守番しといてくれと、頼まれたからだった。
当然のように冬矢は猛反対。しかし、そんな反対する冬矢を『例の言葉』で、一発で黙らせて反対を振り切った。

反対の理由は単純だ。
洋子が秀明を恋い慕っている。
それ故に、越えてはならない壁を越えてしまうのではないかと、猛反発しているのだ。

洋子に言わせれば、
冬矢だって、雪女である母親が陰陽師である父親との間に生まれた子供であり、言われる筋合いはないのだ。



  ――ガチャッ


その時、ドアが開く音がした。
秀明が帰って来たのだ。

秀明は疲れたようにため息をつきながら、家を進み、陽が寝ている部屋をのぞく。
陽はぐっすりと眠っていた。その横で洋子もまた眠っていると、秀明は見えた。

冷蔵庫を少し開けて、何もないので閉める。
そのあとは特に何もしなかった。ただスーツから着替えて、布団を敷く。

「……あー」

大きな息を吐き出し、秀明は床に就いた。