「何の、用ですか?」

伺う由月。冬矢は開口一番にこう言った。

「俺がお前らを守ってやる」

強い言葉で、威厳を待たせてそう言った。
唐突な言葉に二人はびくりと炎を揺らした。


「さあ、おいで。俺が雇ってあげるから。俺が守ってあげるから」

次は優しく囁いた。


恭子から受け継がれた百鬼夜行。弱い妖怪を守り、巨大な勢力を誇る組織。
勢力拡大のために必要なのは、力でも恐れでもなく、優しい言葉。恭子はそれだけで百鬼夜行を作った。放っておけば強い妖怪に搾取されるだけの弱い妖怪を人からも妖怪からも守り、巨大な力を誇った彼女の恩に報いるために己を磨く者もいるのだ。
そうして、百鬼夜行は成長を続けてきた。

冬矢に受け継がれた今もそれは変わらない。
弱き妖怪を守り、人と妖怪の共に共存する道を作る。それこそが百鬼夜行の理念。

冬矢は恭子と同じように、弱い妖怪遺念火を守ろうと手を差し伸べる。
百鬼夜行という大きな組織にいれば、消滅しなくて済む。

二人の炎は大きく揺れ、そして頷く。


喫茶『魑魅魍魎』に二人の従業員が増えた日だった。