阿弥樫高校に、また一つ怪談ができた。
深夜、屋上に浮かぶ二つの人魂。七不思議が消えた代わりに現れた。


「以前言ってた、二人で間違いないよな」

「……ああ」

その人魂を訪ねて、冬矢と烏丸が屋上へと現れた。

ゆらりゆらゆらと燃える炎。
それは二人の姿を確認した時、人の形に姿を変えた。

炎のように紅い髪赤い瞳をした以外は生前と全く変わらない、由月と小夜子の姿。
じっとこちらを見つめていた。怯えるように炎が揺れる。


後に千夜から聞いて分かったことだが、
二人は学生時代から交際していたが、由月の家が一家無理心中を図り、彼だけが生き残った。その事件があり、小夜子の家は由月を遠ざけた。
当初の監禁は、二人が駆け落ちのように示し合わせて計画したものだったようだ。
それでも、長い時間をかけてゆくと、小夜子も不満がたまり、自由を求めて脱走もした。
それを裏切りとした由月が激怒。ひそかにある独占欲に火をつけてしまった。

だがそれでも由月も監禁の手を緩めたようではあった。人の目に触れることこそは避けたものの、朝一に学校にきて、小夜子を解放させ、夜になれば小夜子を帰らせ、学校を自由に歩かせるという最低限の自由。
由月は一瞬のうちに家族全員を失い、そのうえ小夜子が離れることは耐えられなかったのだろう。

孤独と独占欲で狂った由月。狂わせた罪悪感からも小夜子はずっと学校にいた。
彼女はいったい由月のことをどう思っていたのだろう。それは彼女しか分からないが、

今こうして遺念火となって二人が並んでいる光景を見ると、
ただの加害者被害者というわけではないようだ。