警察が出動している間、校庭には二人の死体が遺されていた。
東は事細かに説明をした後、そのまま早々と帰って行ったのだ。


遺された二つの死体。
もう何も動かない。死んだ二人。穏やかな顔で、二人は死んでいた。



「絶望、それしかないね」

そんな中で、また『あいつ』が現れた。凍りつくような黒く禍々しいオーラを持つ。
トラツグミがそこに立ち、穂村を見下ろしていた。

「心中なんてされちゃ、恨みもなにもないじゃないか」

その声は静かで、穏やかな中に鋭さも持っていた。ぐっと、穂村のからだを踏みつける。
冷ややかに見下していた。

「妖怪になってもせいぜい遺念火。ただの火の玉。くだらない弱い妖怪……。がっかりだな。こいつには、がっかりだ……」

怒りをため込んだゆえに行きついた冷たい声。その声が夜の闇を一層濃くしていく。


「まあ、役には立ったな。こいつの殺した奴の恨みでそこそこ強い妖怪もできたし……」

彼の後ろには、多くの妖怪が列をなしていた。目の前の穂村の死体に牙をむけ、憎しみに目を光らせて立っている。トラツグミはにやりと口元に笑みを浮かべた。


「食べていいよ。……許可する。お前らを殺した男と、その理由の女だ」

その許可とともに、妖怪たちは二人の死体に群がった。
肉を裂き、骨を砕く、臓物を食いちぎりむさぼる音が聞こえる。


「……つまらないな」


ぼそりと、トラツグミは吐き捨てた。