「お姉ちゃんッッ!」
叫んで追っても、すでに二人の体は堕ちていた。
驚愕に飛ぶことを忘れた烏丸は慌てて落ちた後を見に行く。
「お姉ちゃんッ! お姉ちゃん! どうしてよ! お姉ちゃん!」
屋上で泣き叫ぶ千夜の声。
烏丸は下で二人を見つめていた。
小夜子が穂村を抱きしめたまま、巻き込むような形で落ちた二人。
頭から落下し、ざっくりと頭が割れている。血が噴き出し、すでに虫の息。
「……喋れますか?」
穂村はすでに死んでいた。小夜子だけはかろうじで意識があった。
声をかけると、ゆっくりと少しだけ瞼を押し上げる。全身の激痛に耐えながら、声を絞り出す。
「……千夜に……伝えて……」
もはや絶望的な状態。手の施しようもない。
さっと飛ぶことができたら、助けることができたのに。今はこうして伝言を聞くことしかできない。
「伝えます……」
「せっかく会えたのに……ごめんなさい。最期に……会えてよかった。……ありがとう」
震える小さな声で彼女は遺した。
遺した後で、ゆっくりと、瞼をおろした。
今、
穂村由月と
宮川小夜子が
死んだ。