「編集長ー可愛いお客さんがきてますよ」
翌日、秀明は仕事中に部下に呼び出された。
『可愛いお客』覚えがないが、とりあえずロビーまで降りて迎えた。
「あ……」
「お弁当、持って来たよ」
笑顔の陽がそこにいた。
手には言われるように弁当があった。
「は?」
「コンビニ弁当とか缶コーヒーとかで済ましてんでしょ。知ってんだから」
「白峰か……」
おしゃべりな奴だと毒づいてはみるが、陽はにっこりと笑っている。
「だから、今度から私がお弁当作る。じゃあ私帰るね!」
そのまま秀明に弁当を押しつけ、走り去って行った。
ぼんやりと、秀明は昔に浸る。
そう言えば、陽の母親にも弁当を作ってもらったな。
弁当を開いてみる。
ちょっと照れ臭くなった。
それから部下に散々冷やかされたのは陽には秘密にしておく。