「陽っ!」

追った先は、学校だった。陽は立ち止まり、肩を震わせる。
目の前の細い体を抱きしめそうになって、それを思いとどまる。

「陽……」

「父さんは、勝手だよ……。私の気持ちを知らないで、母さんのことも隠して……全部一人でしょいこんで……」

涙にぬれた震える声。膝から崩れ落ちる陽の姿はまだ幼い子供のようだった。
寂しさに肩を震わせ、孤独を恐れて陽は泣いている。

「父さんなんか、嫌いよ……」

「うん……」

涙交じりに呟く言葉。その言葉を、冬矢はゆっくり受け止める。何度も何度も陽は呟く。
その言葉はすべて否定的な言葉だったが、その奥には秀明に対する寂しさが隠れている。

ただ秀明に褒めてほしい。だから勉強を頑張ってみた。
ただ叱られてみたいから行儀の悪いこともした。

だけど、そのすべてに秀明は関わらなかった。自分を最低だと言って、そこから逃げていた。それが許せなかった。
好きだからこそ、秀明の態度が何よりも許せなかった。

陽の口から出る思いを、すべて冬矢は聞いていた。聞いたうえで、考えた。
この親子は、本当にすれ違いが多すぎる。