しばらくした時、管狐が戻ってきた。戻ってきた管狐を洋子は迎える。そして管狐の額と彼女の額を合わせて、情報を読み取る。
秀明の場所も、秀明の様子も、派遣した管狐の見てきたこと聞いたことをすべて情報として読みとってゆく。それが終わったとき、また管狐は去って行った。

「……っ」

陽は秀明の行方を聞こうと、去ってゆく管狐から目線を洋子に戻した時、その異変に気付いた。怯えている。自分で自分の体を抱きしめ、脂汗をにじませ、青ざめた顔。

「どうしたんですか!」

「ごめん……私、いけない……」

「えっ?」

声をかけても、洋子は震えが止まることはなかった。あまりの恐怖に、目を合わせようともしない。一体彼女は何を見たのだろう。秀明の身に何が起きているのだろう。陽の顔に強い焦りが表れる。

「洋子さん、お願いします! 父さんはどこですか」

「道案内と護衛はつけるから……!」

すぐに2匹の管狐が現れる。だがそんなことはどうでもいい。どうして彼女はこんなにも怯えているのか、いったい何が見えたのか。それが知りたい。

「洋子さん、何を怯えて……」

「言えない! ……言えないっ」

震えながら洋子は涙をこぼす。

これ以上彼女を刺激してはだめだ。そう悟り、陽は管狐の案内の元、秀明の場所へと走った。秀明が何をしているのか、知らなければならない。



陽は恐怖をおしころし、酒呑島へと向かった。