「やっぱり愛がない」

「うるせーよ」

「愛情持ってるならちゃんと込めて……、」

「―――ちょっと黙れ」


次の瞬間には、ミツの唇があたしに触れてた。

少ししてから離れたミツが、まだ至近距離のまま笑う。


「目くらい閉じろよ。おまえはお姫様にはなれねーな」

「……は?! っていうか、こんなとこでキスとかっ、」

「おまえの読んでる本の男はよくしてんじゃん。人目とか気にしないでキスとか」

「あれはっ、……本の中の話だもん!」

「おまえが言うな」


ミツが笑った顔を見て、あたしまで嬉しくなって思わず笑顔になる。

ふわっと吹いた風が、ふたりの髪を揺らしていく。


「聞き忘れてたけど」

「なに?」

「俺が好きだろ?」


さらさら流れていくミツの髪を見ながら、ちょっとだけ笑う。

そして、繋ぎっぱなしの手を少し引っ張って、今度はあたしからキスをした。