「うゎっ
直人、手冷たいっ」

あたしは直人の手をとる。
しかも恥ずかしいよ…
茜くんがいる前で…


「てゆうことは俺の心は温かいんだな
心の手はあったけ~な
ってことはお前は心が冷たいな」

あたしが笑うと直人も笑った。

それからまたあたしの額を触って自分のと比べた。

「大丈夫だ、から
離して…」


「お前やっぱ熱あるぞ」

急に真剣な顔をして
あたしを見た。

嘘…
確かに気分は悪かったけど


「先生、ここ…福島さんが気分が悪いらしいので保健室に連れて行きます」


「あぁ、いいけど、お前はサボらず戻って来いよ」

みんなが笑い出す。

先生は直人の性格をよく知ってるからね

「分かってますよ、行こう心」



「あ、うん」

直人があたしの手を引く。

「直人~保健室でイチャつくなよ」

男子からの野次が飛ぶ。

「はぁ、んなことしねぇよ」

直人の顔が少し赤くなった。

なんか…恥ずかしい



ドキッ

茜くんと目が合った

…茜くん
あたしはまた目を逸らす。

教室を出て直人と保健室にむかった。








「失礼しま~す」

保健室には先生がいなかった。

「あれ、いないね」

「だな~ちょっとソファーで休んどくか」

直人はあたしをソファーに座らせる。


「大丈夫か??」

「うん…」

なんか眠たくなってきた

うとうとしてるとそれに察した直人が口を開く。


「眠いのか??」

「あ…うん、ちょっと」


「肩…」

ん??
あたしは直人を見た。
直人は恥ずかしそうに笑う。

「肩に」

そう口を開いた瞬間
いきなりドアが開いた。

ガラッ

「あら??二人ともどうしたの??」

保健の先生が元気そうに入ってきた。

「あ…心、熱があるっぽいんですよ」

先生はあたしを見る。

「じゃぁ、ベッドに寝とく??」

そう言うとまたドアが開いた。

「先生~絆創膏下さい」

「あら、佐藤くん
また来たの??」

……茜くんだ。

…絆創膏

そっかさっき喧嘩してたもんね

なんだろ…
なんか苦しい…


「おいっ、心??
どうした??」


目の前が暗くなってく…


「心っ」

あたしを呼んでるのは誰…??






…ひっく

ひっく、…っく

誰??
そこで泣いてるのは誰??


あ…たしー…?


泣かないで、
大丈夫だよ


お願いだから


泣かないで…


お願いだから


笑ってよ…


お願いだから

誰か…

……??


温かい…
落ち着くよ

あたしを抱きしめてくれる
この手を、あたしは知ってる…






「んっ…」

あたしはそっと目をあける。

ベッドの横に人影があった。

…茜くん??

椅子に座って眠りながらあたしの手を握っている。


「心…、起きたのか??」

茜くんが目を覚ます。

名前…


「…佐藤くん」

あたしは茜くんの苗字を呼んだ。

茜くんは手をすぐに離してあたしに謝る。


「わ、わりぃ福島」

「いぇ…、あれ直人は??」

あたしは辺りを見回す。

「東の事は名前なんだな…
昔は俺の事、」

「…??佐藤く、ん」

あたしは茜くんを見る。


「…別に、なんでもない」

あたしに悲しい表情を見せる。

どうして、そんな顔するの…??






「話すの、久しぶりだな
あの日以来か…」

ベッドから降りるあたしに、茜くんは話かける。

「あ…うん、ところであたし何でここに寝てるの??」



「あぁ…倒れたんだよ
でも、もぅ大丈夫そうだな」

茜くんはあたしを見て微笑む。

その笑い方、昔から変わってない…


「うん、もう大丈夫!!
誰が運んでくれたの??」

「東…お礼言わないとな
もぅ行こうか…」

あたしたちは保健室を出て教室に戻る。


あたし達は無言で廊下を歩く。

気まずいなぁ…

「あっ、心!?
もぅ大丈夫なの??」


唯が心配して走って来る。

「もぅ大丈夫だよ~」

唯はあたしに抱き着く。

「そぅ??なら良いけど」

あたしから離れて
隣の茜くんを見る。


「ども。」

「あ…ども、それじゃ俺はもぅ行くから
早く元気になれよ」

あたしを見て、手を挙げた。


「心…茜くんと同じ小、中学校だったんだよね」

「あー…、うん
でも喋ったことあんまりないし」

唯は心配そうにあたしを見る。


「なんか、無理してない??
本当は茜くんのこと…」


「本当に何もないから…」

そう言うと唯はあたしを優しく抱きしめる。

「そっか…、なんかあったらあたしに言ってね」

「うん、ありがと」



「おっ、もぅすっかり元気になってんじゃん」










「直人…」


「元気そうで何よりだな」

直人はあたしの頭を撫でる。


「あ、さっきはありがとね」

「どういたしまして
あのさ、心と佐藤って知り合い??」


あ…
どうしよう…


「あのさ、今日帰りに3人で駅前のアイス屋さん寄って行こーよ」


唯があたしを見る。

唯…??


「あそこは美味しいよな、あ…金あるかな??」

直人は財布の中身を確認しだす。



あたしは唯を見る。


唯は直人に気付かれないように口に指を当てる。



「唯…ありがと」


「早く行こう~」

唯に引っ張られてアイス屋へと向かった。






「ぅわあ~
やっぱここのアイスはおいしい…」

「うん、うまいね」

みんな違う味をそれぞれ選んだ。


「唯のそれ美味しそうだね」

「食べる??」


唯がアイスを一口スプーンですくうとあたしの口まで持ってくる。


「うん!!」


あたしは頷くと
アイスを食べた。

「あ…うまい」


なんか、懐かしい味がする。


「心…??」


「ご、ごめん
美味しすぎて…」


あたしはどんどんアイスを口に運ぶ。


「ごちそうさま」

「美味しかったね
やばっ、もうこんな時間!?
もう行くね、バイバイ~」

唯は慌てて店を出て行った。


「唯って今日
塾なんだな…」

「そうだね~」

あたしと直人は店を出て帰ることにした。





「そういえばさ、今日
あたし倒れた時ベッドまで運んで大変だったでしょ??」


「…お前を運んだの俺じゃない」

えっ…
だって

「佐藤だよ…」


直人は立ち止まりあたしを見た。


「あいつが心を保健室のベッドに運んだんだよ…」


「でも、茜くん直人がって」

直人は目を逸らして俯いた。

それから顔をあげて
笑った。


「明日、お礼言わなきゃな!!」


「直人…そうだね」

あたしは小さく頷いた。







茜くんにあったら
今日はお礼言わないと…


「こ~ころ、おっはよう♪」


唯があたしの背中を軽く叩く。


「唯、おはよう~」

唯は顔を近づけて来て口元が少し緩んだ。

な…何!?
この顔はきっと…

「…いきなり何?」

考えてた事が見事に的中した。

「んふふ、心…あたしがいなくなってからなんかあったでしょ♪」


唯は自信に満ちた笑顔であたしの肩を揺さ振る。


まぁなんとなく言ってくるだろうって思ってたんだけど



「あったよ…最悪な事実を知ったよ~」


「はははっ、最悪ねぇ…
その最悪な事実をあたしに教えなさい」


あたしは唯に昨日の、直人と茜くんについて話をした。


「ふーん、茜くんがねぇ
心と茜くんの関係を知りたいけど心が言ってくれるまで…待っとくよ」


そっか…
唯は知らないんだよね…


「唯…あたし話すよ、聞いてくれる??」


「当たり前じゃん」


唯は笑った。