しばらく沈黙が続く。

「なぁ…」

茜くんが口を開いた。


「ん??なぁに??」


微かに風が通り過ぎた。

あ…
懐かしい香りがする。


「心はさ…小さい頃の記憶がないんだよな??」


「…うん、ごめんね」


一瞬、茜くんの顔が悲しそうに見えた。


「謝らなくていい…」


茜くんは急に立ち上がって
優しく大きな手をあたしに差し延べる。

「え…何??」


「帰ろうか、送ってく」


嬉しい…
でも迷惑かける訳に行かないし…


「大丈夫だよ!!一人で帰れるよ」


そう言うと茜くんはあたしの手を引っ張って
立ち上がらせる。


「ったく…お前なぁ
一応女なんだから何があるか分かんねぇだろ!!」


「一応…??」


一応っていらなくない??


「分かったから、
ほら早く帰るぞ」



「うん…」


あたし達は教室に向かった。