バキッ
鋭くて痛々しい音が中庭に響く。
「こら、またお前達か!!」
先生達が中から慌てて出てくる。
「あ!?うるせぇな~」
1人の男が先生を睨みつける。
「やめろ裕斗、
気にするな、行くぞ」
もう1人の男が裕斗という名前の男を見た。
あー…
茜くん…
あたしはその人を知ってる。
ドキッ
茜くんと目が合う。
「心~??」
あたしはすぐに目を逸らして
友達の唯のところに走って行った。
昔の茜くんは違ったのにな…
「さっきの凄かったね」
唯は関心したように笑った
「うん…」
あたしは小さく頷いた。
「茜くん、かっこいいよね~」
「ルックスは最高だし中身もわりといい人だよね~」
周りの女子達は大騒ぎしている。
「そ、そういえば数学の予習してきた??」
あたしは話題を変える。
「あ、忘れてた…
心、写させて♪」
唯は笑ってあたしにねだる。
「仕方ないなぁ~
今度なんか奢ってね」
唯はあたしのノートを必死に写す。
するとそこに
直人が笑いながらやって来た。
「唯…悪いんだけど、そこ俺の席☆
座らせてくれねぇかな~」
「分かったよ、自分の席でしますよ」
唯はあたしのノートを自分の席に持って行った。
あたしが笑ってると
直人は席に着いてあたしの頭を撫でた。
「な、何!?」
あたしは直人を見る。
「心、なんか元気ねぇーな」
「ははは
全然元気だよ」
笑ってみせる。
だって元気だもん…
直人は不満そうな顔をしてあたしの頬をつねった。
「無理すんなよ」
「大丈夫だよ」
あたしはそう言って授業の準備をする。
チャイムが鳴ったと同時に先生が入ってくる。
「お前ら席に着いとけよ~」
茜くんも教室に入ってきた。
あたしの隣は茜くんなんだよね…
「心、顔色わりぃぞ」
直人はあたしの額を触った。
「うゎっ
直人、手冷たいっ」
あたしは直人の手をとる。
しかも恥ずかしいよ…
茜くんがいる前で…
「てゆうことは俺の心は温かいんだな
心の手はあったけ~な
ってことはお前は心が冷たいな」
あたしが笑うと直人も笑った。
それからまたあたしの額を触って自分のと比べた。
「大丈夫だ、から
離して…」
「お前やっぱ熱あるぞ」
急に真剣な顔をして
あたしを見た。
嘘…
確かに気分は悪かったけど
「先生、ここ…福島さんが気分が悪いらしいので保健室に連れて行きます」
「あぁ、いいけど、お前はサボらず戻って来いよ」
みんなが笑い出す。
先生は直人の性格をよく知ってるからね
「分かってますよ、行こう心」
「あ、うん」
直人があたしの手を引く。
「直人~保健室でイチャつくなよ」
男子からの野次が飛ぶ。
「はぁ、んなことしねぇよ」
直人の顔が少し赤くなった。
なんか…恥ずかしい
ドキッ
茜くんと目が合った
…茜くん
あたしはまた目を逸らす。
教室を出て直人と保健室にむかった。
「失礼しま~す」
保健室には先生がいなかった。
「あれ、いないね」
「だな~ちょっとソファーで休んどくか」
直人はあたしをソファーに座らせる。
「大丈夫か??」
「うん…」
なんか眠たくなってきた
うとうとしてるとそれに察した直人が口を開く。
「眠いのか??」
「あ…うん、ちょっと」
「肩…」
ん??
あたしは直人を見た。
直人は恥ずかしそうに笑う。
「肩に」
そう口を開いた瞬間
いきなりドアが開いた。
ガラッ
「あら??二人ともどうしたの??」
保健の先生が元気そうに入ってきた。
「あ…心、熱があるっぽいんですよ」
先生はあたしを見る。
「じゃぁ、ベッドに寝とく??」
そう言うとまたドアが開いた。
「先生~絆創膏下さい」
「あら、佐藤くん
また来たの??」
……茜くんだ。
…絆創膏
そっかさっき喧嘩してたもんね
なんだろ…
なんか苦しい…
「おいっ、心??
どうした??」
目の前が暗くなってく…
「心っ」
あたしを呼んでるのは誰…??
…ひっく
ひっく、…っく
誰??
そこで泣いてるのは誰??
あ…たしー…?
泣かないで、
大丈夫だよ
お願いだから
泣かないで…
お願いだから
笑ってよ…
お願いだから
誰か…
……??
温かい…
落ち着くよ
あたしを抱きしめてくれる
この手を、あたしは知ってる…
「んっ…」
あたしはそっと目をあける。
ベッドの横に人影があった。
…茜くん??
椅子に座って眠りながらあたしの手を握っている。
「心…、起きたのか??」
茜くんが目を覚ます。
名前…
「…佐藤くん」
あたしは茜くんの苗字を呼んだ。
茜くんは手をすぐに離してあたしに謝る。
「わ、わりぃ福島」
「いぇ…、あれ直人は??」
あたしは辺りを見回す。
「東の事は名前なんだな…
昔は俺の事、」
「…??佐藤く、ん」
あたしは茜くんを見る。
「…別に、なんでもない」
あたしに悲しい表情を見せる。
どうして、そんな顔するの…??