『あっ!大変。授業始まる!』

真由の声で我に返る。気づけば授業始まる3分前!!チャイム壊れて鳴らないんだったぁ!!

急いで教室へ入るもアウト。既に先生は黒板の前に立っていた。

『宮古、榊どうしたんだ?』

うわっ。絶対怒ってる。

『あっ、そのぅ…。』

笑って誤魔化そうとしても無駄。

『もういい。榊は黒板を掃除して帰れ。宮古は体育館の器具庫掃除だ。』

うわっ。この教師、何であたしは大変な仕事なのっ!?

不機嫌になりながらも席に着く。

『唯、fight!!』

『いいなぁ、真由は黒板で済むじゃん。』

口を尖らせて文句を言う。

只今あたしを不機嫌にさせる人物は英語教師、水木。生徒を差別する事で有名。

『先生っ何で唯の方が大変な仕事なのっ?』

後ろから聞こえた声。どうせ返ってくる言葉は分かっている。
『そりゃ、榊の方が頭良いし可愛いだろっ。』


ううっ。涙出てきそう。


放課後の体育館器具庫。

『誰も居ないなぁ…。』
ちょっと寂しい。

あまりにも汚い器具庫にため息が出る。
どこから掃除したらいいのか…。

ゴソゴソ―

『きゃっ。虫っ。』
隅にいたクモに驚く。
も~。やだっ。


『誰かいるのかっ?』
体育館から声が聞こえた。男子の声だ。

気づくと器具庫の入り口に高城先輩がいた。

『高城先輩…。』

『唯?何で唯がここに?』
先輩の優しい声に涙が出てくる。

『おいっ!泣くなょ!』
慌てる高城先輩。

『水木先生がぁ器具庫掃除しろってぇ、グスン…。』
もう、何が何だか分かんなくなってきた。

『あっ、水木かぁ。差別するもんな…。かわいそうに。』

ぽんぽんと頭を撫でてくれる高城先輩。
それでもっと涙が出てくる。

『だからっ泣くなょ!掃除手伝ってやるから。』

『本当ですかっ?』
驚きで涙が吹き飛ぶ。
あぁ…。と言いながら掃除をし始める先輩。それに負けないように働く。

『唯は何て差別されたんだ?』

うぅっ。そこは聞いた欲しくなかったなぁ。

『頭良くないし、可愛くないからって水木先生がっ。』