―――――さては、アタシを足にするつもりだな
ちょっとは警戒してほしいんだけど
ついでに遠慮と配慮もしてほしいんだけど
学校が終わって駐車場に向かうと、車にもたれて本を読んでいる背の高い姿
「外で待ってると寒いでしょ」
「ちょっとな」
車のロックが外れる音がして、かずまは本を閉じると助手席に乗り込んだ
「何読んでたの?」
持ち歩くにしては分厚すぎる本をカバンに入れてる姿を見ながらエンジンをかけると、エアコンがうるさく動き出す
「戦争論」
「…………かわいくないもん読んでるね」
「マンガだよ」
「へ?」
バックミラーを確認して車を発進させる
アタシは車の時計を確認して「もうこんな時間だね、急がなきゃ」と呟いた
「今日……パーティだっけ?」
「うん、明日が週末でよかったよ」
「服は?」
「ちづるさんにドレス貸してもらってる」
「ふーん」
何故か隣席から不機嫌オーラが漂って、あっという間に車内に充満する
その沈黙と重苦しい空気を引き連れていつものようにマンションへ戻ってくると、あこがキッチンから顔を出した
「よ!」
とこっちの空気とは正反対の明るい声
アタシはかずまをリビングに置きっぱなしでそそくさと自分の部屋へと逃げ込んだ