「ねえボーイさん、乗ってく?」

彼がこっちを見ると同時に酔っ払いもこっちを見て、半開きの目のまま少しニタついた顔が目に入った


「なんだよ姉ちゃん、姉ちゃんが相手してくれんのか」


ボーイさんは舌打ちをすると足早にこっちに向かってきたから慌てて助手席の鍵をあける

素早く乗り込んできてドアをしめる音とともに信号が青になり、アタシはとっとと車を発進させた

バックミラーを見ると酔っ払いが何か怒鳴っているみたいだけど、すっかり窓は閉めた後で何も聞こえてこなかった


どちらが話し出すのか少し考えて数秒の沈黙……にあっさり負けるアタシ


「で?どこまで行けばいい?」

「ここでいい」

「え??なんで??どうせだから送るよ」

「……じゃあ……」


と彼は住所を告げた


……そこって高級住宅街じゃないのよ

再び沈黙になっても気まずいし、と話題をふる


「一ヶ月前くらいからだったっけ?もう仕事は慣れたました?」


静まりかえる車内、何も応答がない


えっと…………



「あの、ボーイさん、アタシあなたのお名前知らないんだ」

「………」



えっと…………


話しかけるなってこと??


まあ、いいけど…………