あれ?

新田くんだ


軽く首を傾げてそちらに歩み寄っていく


あ、女子もいる!


新田くんの前に小さくてかわいい下級生っぽい子が顔を真っ赤にしてうつむいて立っていて、アタシはヒールの音を鳴らさないようにちょっと足音をひそめる


新田くんは……

相変わらず無表情で彼女を見下ろしていて


……どうしよう

覗き見するつもりはなくても

車がその二人の近くに止まってるから仕方ない


青春の香りがプンプンするその状況にアタシまでちょっと胸がドキドキする


どう見ても

告白……っぽいけど???



恥ずかしさのあまりか目をつぶっている彼女に新田くんが色のない視線のまま何かを話しているのがわかる


ああ、好奇心


ううん、先生たるもの、人の恋心であわよくば胸キュンしようとしちゃいけない


そんな自制心を働かせようとなるべく聞き耳をたてないようにしてるつもり……でも


女の子の顔からどんどんと表情が消えていくのがわかった


新田くんがため息をつくように肩を上下させると、彼女ははじけたように走りだす


一瞬こちらに向かってくるかと思ってギクっとしたけど


彼女はそれどころじゃないんだろう……


片側に寄せて束ねた髪が風になびいたのが見えると、彼女の目が濡れているのもわかってしまった


アタシの数メートル先をあっという間に駆け抜けていく

―失恋―そんな二文字が甘酸っぱく胸をしめつけた