気まずい…よね
うん、気まずい
授業以外であったら絶対気まずい
教育実習がはじまって一週間
毎日そんなことを考えて、ヒヤヒヤドキドキしながら過ごしてる
新田くんと顔合わせたらどんな顔すればいいんだろ
なんて声かければいいんだろ
色々とシミュレーションしてみるもちっともさりげなくやり過ごせなくて焦りばっかりが先にたっていたけど
実際、教育実習中は夜のバイトの方も回数を極端に減らしていたし
授業で彼のクラスに行く以外で顔を合わせることは無く過ぎていった
新田くんはといえば授業中はメガネをかけて
ノートや教科書に目を落としたまま顔をあげないし
メガネがカモフラージュになって表情がますます読み取れないし
席の近い女の子が話しかけても興味なさそうに相槌をうっておしまい
みたいな
反対に周りがどんな目で新田くんを見ているのかよくわかる
授業中なんて、教科書を読み上げる新田くんを女の子達がハートの目で見つめている
休み時間となれば下級生達が廊下で新田くんの噂話に興じていたり
……女子達の憧れの的なのね
まあ、男前であの体型だったら、そうなるか
しかも生徒会長で、メガネなんかかけちゃって、ひく~い声で名前なんか呼ばれちゃったりしたら
まるでマンガの世界だもんね
不謹慎なことを考えつつ、教科書越しに彼の顔を盗み見ていた
窓の外の穏やかな秋の景色
音も無く静かに木々が紅葉していくように
アタシの心もこの時から少しずつ色を変えていたのかもしれない
だとしたら木々もアタシのように、自分が今燃えるような色に変化していることに気づいていないのかも……