「何?」

「いえ、何もありません」


怒ってるんだか優しいんだかわかんない、この人


一台の車が静かにアタシ達の前へと減速してきて、止まった

すかさず新田くんが後部座席のドアを開ける


「乗って」






乗ってって…………





何このでかい外車……




彼がアタシの背後にまわって、アタシは広い広い車内へと押し込まれた


マンションの住所を告げると音も無く走り出すリムジンカー

驚きすぎて声の出ないアタシに新田くんは前を見たまま話しかけた


「城田…あんたになんて?」

「城田……城田先生?

……ああ、えっと、僕の家で飲みなおしましょうって」

「へえ」


聞いといて「へえ」って…


「なんで行かなかったんだ」

「なんでって……行くとおかしなことに……」


新田くんがこちらに顔を向けた


「そういうことはわかるんだ」


バカにしたような口調で、アタシは少しふくれると返事はしなかった