閉店時間までいてくれた前田さんをお店の前までお送りして背伸びをしながらお店に戻った

お客さんがいなくなった店でママがこりをほぐすように首を左右に曲げながらアタシにいう


「おつかれ、マキ」

「おつかれさまです、ママ、肩こり?」

ママの背後に回って、後れ毛が色気をかもし出す首をマッサージする


「前田さん、あんたに入れ込んでんね」


関西なまりのあるママの口調は怒ると怖いけど、そうじゃないときはすごくあったかい

その関西弁が妙に着物姿とマッチしていて、なんとも妖艶な雰囲気をかもし出しているからついついみとれてしまう



Lounge『FF』


ここのラウンジは美人が多い

みんな髪が長くてつやつやで、クルクルカールさせていたり、ゴージャスにアップにしていたり

顔も夜の仕事をしているとは思えないすべすべなお肌で、目もキラキラで……



その中でもアタシは髪は肩につくかつかないかのボブだし、目は大きいって言われるけど、けっして絶世の美女ではないし、それをカバーするほどグラマーな体の持ち主でもない


「スレンダーで、顔もちっさくて、モデルみたいにキレイやんか!

もっと自信もっていいよ!

ブサイクはうちの店では働かれへんし」

ってママは笑いながら言ってくれるけど、まわりにいる美人を見ているとどうもそう自信ももてないでいる




「ありがとう」

といって、肩をマッサージしていたママがアタシの前から立ち上がる

あくびをしながら帰る支度をしていると、店で人気ベスト3に入るちづるさんがコテで髪を巻きなおしながらアタシに向かって大声を出した

「マキ、これからホストクラブ行くんだけど、つれてってあげようか?」

「ちづるさん、アタシお酒飲めないんですってば」

「つまんないなー、ホスト侍らすの楽しいのに」

「……ちづるさんってば」

この店の中でもアタシは一番年下で、他の女の人達もアタシを妹のようにかわいがってくれるから、ますます子供っぽさが消えないアタシ

それでももう成人式は済ませてるんだけどな