ドアを開けると、「いらっしゃいませ」と低い声の男が軽く頭を下げた


「新田で予約入れてます?」

「少々お待ちくださいませ」

の言葉の後少しの間

「ご予約は二名でお受け致しましたが……」

「三人は無理っすかね?」

相手は不審げな顔をして「そちらにおかけになってお待ちください」と奥へと消えていく


……さて、追い返されるか、通されるか……


足音静かに戻ってきた男は「こちらへどうぞ」と片手を開いた


個室の扉をくぐると、挨拶よりも先に「やっぱりお前か」と先手を打たれた


「週末の夜、お前にだけいい思いさせてたまるか」

と返してやると、女に顔を向ける


肩までの髪がやわらかく揺れて、大きめのイヤリングがちらちらと隙間からのぞいている

勝気な目と、ゆるい唇が対照的で、なんだかアンバランスな顔


「長瀬くん、よくここがわかったね」


「かずまの事なら、あんたよりよく知ってるからね」

「あれ?アタシの恋敵?」

「かずま、俺に返してくんない?」

「やだー」


週末の夜は、俺のナンパ流れ旅にかずまを同行させるのが常だったのに、この女があらわれてからというもの……

かずまのつきあいがすこぶる悪い


「っていうか、彼女できたんでしょ?

年下の、童顔の、もう逃げられちゃったの?」


女が笑顔を向けてくる


「小沢に紹介してもらったんだよ、生徒会の後輩

小沢いい奴だな~

ちひろと違って」