「今日はマキも一緒に飲もうよ」

そう誘われたとき、ボーイさんがすっと来てアタシのそばにグラスを置く

中身はウイスキーにみせかけたウーロン茶


「アタシはスペシャルドリンクオンリーなんです」

「ただのお茶だろ?」


前田さんがアタシの手のグラスに少し顔を寄せて匂いをかいだ


「だって、ウイスキーは大人の味すぎてアタシにはまだわからないんだもん」

「子供だな、マキは」


アタシは前田さんを軽くひじでつっつくと、光を反射する水差しからウイスキーに水を注いだ


急激に冷やされて霜のおりたグラスのまわりをぐるっとおしぼりで拭いて前田さんの前に差し出す


「じゃ、おつかれさまです」

いただきますじゃなくて、おつかれさまっていうのがアタシのくせ


「マキもおつかれさま」

嬉しそうに笑った前田さんは以前「そういわれるのが好き」って言ってたっけ?


ウイスキーを喉を鳴らして一口飲むと、苦しそうにネクタイをゆるめた