あこの声じゃないよね、今の


あこの顔を見ると、アタシからすっかり目をそらしている

ソファーに置いたカバンをさっと取ってそそくさと自分の部屋へと入っていく彼女を裏切り者を見るような目で見送った



「ちひろ」



「……はい」

「合コンがしたいわけ?」


背後が怖くて振り向けないままぶんぶんと首を振る



「こっち向け」

「……はい」


おそるおそる体をかずまに向けると、氷点下の視線がグサグサと突き刺さって体がよろめく


「じゃあ、医学部の男と付き合いたいわけ?」


もう一度首を振る


「合コン、行くんだ?」

「……行かない」

「うそつけ」



凍てつきそうな視線がますます温度を下げた気がして、アタシは次の言葉を失ってしまった



せっかく素敵な夜を過ごそうと思ってたのに

アタシの余計な一言で台無し


かずまはため息をついてアタシに背中を向けて玄関に向かって行ってしまった


教育実習が終わったお祝いの……夜景





――――――見たかったな