「萌えないな」
「は?」
彼のよくわからない発言を聞き返す声が裏返ってしまった
「気の強そうな女が泣きそうな顔が好きらしい」
「…………はい??」
「泣くのをこらえて、こらえきれずに泣いちゃうとたまんないらしいよ」
……変態
「俺は、気の強そうな女より、年下の何にもしらなそうな子を開発するほうが好きだけどね」
……変態コンビ
「気の強そうな女を泣かすって、泣いた時点で気ィ強くねーじゃんって思うんだけど……どうなの、その辺」
アタシに聞かれても。
「で、かずまに泣かされてるわけだ」
「泣いてないから」
「よお!かずま!」
長瀬くんが突然アタシの背後に向かって手をあげてそう言うから、アタシが体をびくっと強張らせた瞬間
「うっそーん」
…………ドSコンビ!
「かずまの機嫌、あんまり損ねるなよ…俺がとばっちり食うんだから」
そんなの……知らないよ
「俺アイツが女のことであんなに機嫌悪くなってるの初めて見たし……」
機嫌が悪いのは……いつもなんじゃないの??
「ま、その…泣きそうな顔?…かずまに見せてやってよ
すぐ襲ってくれるんじゃない??」
……恋愛アドバイスされてる??
「あ、あの……アタシ、一応先生なんだけど」
彼の発言にちょっと顔が熱くなって、虚勢を張ってみる
「ああ、そうだった、……すっかり、かずまの女としてしか認識してなかった」
…………怒ればいいのか
…………喜べばいいのか
いや、喜ぶのはおかしい
そう考えている間にも長瀬くんはサッサと通り過ぎて行ってしまう
坊主に近い短髪
なのに、髪色は明るく染められている
校則、違反!
おかげで涙は乾いて、アタシは手に持っていた靴を履くと校舎を出た