日付が変わってから、閉店した店を出た

前田さんはとっくにママとちづるさんが帰らせていて、アタシも自分のカバンを持って店を出る


怒ってたかずまはサッサと帰ってたし、タクシーでもつかまえて帰ろ


一人は寂しいけど……


なんてちょっとヤケを起こしたい気分


アルコールが入ると一人になるのがすっごくイヤになるから、今日飲んだのは逆効果だ


余計寂しい


ヒールを鳴らして道路のほうに出ると、壁にもたれて立つ誰かの姿が目の端にうつった

アタシを見ると体を起こして数歩近づいてくる


嬉しさときまずさが同時にやってきた


「かずま」


「……送ってく」


そういうと、アタシの少し前を歩いてタクシーをつかまえた


静まり返った車内でかずまが皮肉っぽく笑う


「今日は静かだな」

「え?」

「また前みたいに誘わねーの?」

「怒ってないの?」

「怒ってるよ」



あからさまに怒りをあらわされるより怖い


なんともない顔をして怒ってると言い切られてしまって、アタシは黙った


「お前はどうすれば機嫌なおすわけ?」

「……知らない」


険悪ムードがたちこめる、車内