理性に傾けば思ってもないことを口走りそうだし

感情に傾けば泣いて怒り出してしまいそうだ



そしてかずまは返事ができない程アタシが動揺してるのがわかってるくせにフォローひとつしない



「今は何もない」



今は、なんてダメ押しのように突きつけられる過去の存在




聞いたのはアタシだけど……でも、そうじゃないもん


口を閉ざしたままのアタシにかずまは不服そうな表情をする


「自分から聞いておいて泣くつもり?」


そうじゃない


そうじゃないもん


そうじゃないの



言葉にしたいのに、乱れる思考がまとまらなくて、感情も入り混じってうまく伝えられない

でも……泣きたくない

一生懸命こらえるアタシの気持ちも知らずにかずまはため息をついた



「めんどくさい」



その一言でアタシの震えはとまり、涙は引っ込んで、グラグラゆれていた理性と感情は瞬時に冷静へと変化した



柿を一個、口に運ぶ



「柿は好き

でもかずまは嫌い」


「柿と比べられても…」

…………

もうここに何一つの癒しもないし

ひとかけらの笑いもない