「小沢は生徒会が一緒だからな」

「それだけ?」


かずまがアタシの表情をチラッと上目で確認した


「どういう意味?」

「小沢さんに……“かずまをとらないで”…って言われたから」


ポーカーフェイスから表情を読み取れるほどアタシは器用じゃない


「ただの生徒会の仲間なら、そんなことは言わないし

しかも小沢さんの片思いだったら、そんな強気には出ないかなと思って」


大人の余裕ぶって(わかってるから、隠さなくてもいいよ)…と示唆するような言葉を吐く



深く考えずに聞いたアタシはバカ



確かにかずまより年上だけど、アタシは決して大人な女じゃない


かずまより年上だけど…大人の女の余裕なんて持ってない




「聞いてどうすんの」


根拠もなく、否定してくれると思ってた

なのに予想を裏切る答えが返ってきて、背筋が凍るような感覚に陥った


誰かが部屋の前を歩く振動でふすまがカタカタと寒そうな音を鳴らす


「付き合ってるとか?」

「付き合ってないけど……」


付き合ってないけど、何

でも聞けない、怖くて

深く息が吸い込めなくなって、呼吸が浅くなる

一瞬で指先が冷たくなって、明らかに震え出す



「ちひろと出会う前の話だから」


そう言われても、理性と感情のバランスが保てない

こんな時に、ちひろなんて呼ばないで