「あーーーあ」


ため息をついて廊下に立ち止まり壁にもたれかかると、折れたパンプスを片方脱いで途方にくれた

教室に戻っていく生徒達の姿も遠くに消えていく


「どうしよう……」


もたれた壁に開く窓からはアタシの気分に不釣合いなすばらしい秋晴れ

こんなに気持ちいい天気なのに、心はうらはらに沈んでいく

ほんと…ツイてない……




「マキって、苗字だったのか」




突然聞こえた抑揚のない声

声の方向を横目で見ると、初めて会った時に感じたような人を見下した視線の彼が腕を組んで立っている



「ああ…ボーイさん」


うっかりそう言った途端、傷ついたアタシには痛すぎるくらいの舌打ちが聞こえてきた


「あ、ごめん……生徒会長さん」

「新田かずま」


昨日“知る必要ある?”なんて冷たくつっぱねられた彼の名前


「新田くん……」

「あんた、どんくさいな」


アタシの手に握られたヒールの折れたパンプスに目をやるとあきれた表情で言い放った


「…………」


返す言葉もなくパンプスをみつめて黙っていると、ため息が聞こえて…思い立ったように新田くんはスタスタと近づいてくるとアタシの腕をつかんだ