教室に戻っていく生徒達にまぎれてアタシも歩き始めたけど、お先真っ暗

ピンヒールをはいてるせいなのか、体内から湧き出る落胆のせいなのか膝がグラグラしてる


「真木センセ、足がフラフラっすよ」

「キンチョーしてんの?か~わいい」


男子生徒の声が聞こえてきて、アタシはちょっと泣きそうな目でそっちを見た

目の合った生徒達が「うっ」と黙る



……さようなら、かわいい生徒達

短い付き合いだったね




真木先生、夜の世界に戻ります




「センセー、美人風だね」


また別の方向から男子生徒が声をかけてくれる


みんな、ありがとう……!

ありがとうね

たった数時間のエセ教師生活でも、アタシは幸せでした


悲劇のヒロインでの悲壮で感極まっていると「ドンッ」とぶつかられて、脇を女子生徒がすり抜けていった

よろよろだった上にぶつかられて、グキッて音とともに足首をぐねる


「い!いたた!!」

「すっとろく歩かないでください、邪魔ですから」


と捨て台詞つき


早足で歩く彼女についていこうと、彼女の長い髪がヒラリと舞っているのが見えた


こわ!!!


ツイてない時はツイてないもんで、ほっそいほっそいピンヒールはアタシの運のなさを象徴するかのようにいとも簡単にポキッと折れてしまった