｢わからないんです。人の心とか…そういうの苦手で…。｣

小、中、高とイジメを受けて育ったせいもあり、あまり人がわからなかった。

腹の中はわからないと、いつも自分に言い聞かせて、注意深く生きようと一生懸命だった。

でも、ここはホストクラブ。

本当も嘘もない混ぜの世界のオーナーに、何を言ったんだろうと、自嘲気味に笑った。

｢人が人生の中で出会う人の数は数百万人と言われていますが、本当に信じられるのは100人にひとりだそうです。｣

｢1％ですか…｣

｢そぅ。でも、その1％を大事にしたいと思いませんか？信じて裏切られてを私は繰り返してきましたが、残った人間はその1％なんだと信じています。勿論、礼苑もそのひとりです。歩夢もそうだと私は思っていますょ。｣

｢オーナー…ありがとうござぃます…｣

そこに礼苑さんが現れた。

｢紗耶香ちゃん、お待たせ。もう少ししたら歩夢帰ってくるから。長くかかっちゃってごめんね。今日は奢るから飲みながら待っててょ。すぐ来ると思うから。｣

｢ぁ…礼苑さん…ありがとうござぃます…｣

礼苑さんはピースして、オーナーはお辞儀をしてくれて退席していった。