「紗耶香からあんなメール来て、俺すっげぇへこんで…でも礼苑さんから紗耶香がずっと店で待っててくれてるって聞いて、嬉しかった。ありがとう。」

あたしは無表情で、しかも何も言えなかった。

「紗耶香笑ってょ。紗耶香の笑顔見たい。」

歩夢も心細かったんだろう。

突然そんなコトを言ってきた。

でも、歩夢が帰ってきた安心感からか、あたしは怒っていた。

「作り笑いなら、いくらでもしてあげる。…これで満足?」

「っ…ゴメン。やっぱ怒ってるょな。」

歩夢はうなだれてしまった。

あたしは怒りに任せてまくし立てた。

「なんで嘘なんかつくのっ?つか、なんで危ない道だってちゃんと言ってくれなかったんだょ?あたしだって最初からわかってたらあんな道っ…」

『通ったりしなかった』はあたしの嗚咽で多分伝わらなかった。

歩夢がギュッと抱きしめてきて、ゴメンを何回も繰り返した。

咳ばらいが聞こえて、そっちを見ると礼苑さんが立っていた。

「女の子泣かせちゃダメっしょ?」

と微笑みながら席につく。

「俺おしぼり持ってきます。」

恥ずかしかったのか、歩夢がそそくさと席を立つ。