「紗耶香、俺と付き合えば?」

歩夢の唐突なモノ言いにあたしは呆れてしまった。

「はぁ?何言ってんの?色恋営業は他でどーぞっ。」

完璧な営業スマイルでかわす。

相手はホスト。

本気になる訳がない。

ってか本気になっちゃいかん。

しかも1回か2回会った程度の相手に、向こうが本気だなんて考えられない。

あー時間の無駄。

そう思ってお気に入りのヒールを鳴らして、背を向けた。

「待てって。紗耶香、今彼に利用されてるだけだって。俺ほっとけないよ。俺だったら紗耶香をもっと幸せにするし、大事にする。」

確かにあたしの今彼は世間で言うだめんずだ。

携帯代払ったり、電気代払ったり、ガス代払ったりしていた。

愛されているのかわからなかったけど、辛くても側に居たかったのは居場所が欲しいからだ。

歩夢には今日愚痴ったばっかりだった。

「3割…」

歩夢の真剣そうな声が聞こえる。

「俺ホストだから全部信じろなんて無理だと思う。だから3割だけ信じてよ。それでだんだん紗耶香が100%信じてくれりゃイイし、もし信じられないんだったら別れればイイんだし。」

ねっ?と笑うその顔が朝日に照らされてて綺麗で、反射的に首を縦に振っていたコトに気付いたときには、歩夢の腕の中にいた。