私は母に連れられ、霊安室にはいった。

するとそこには、白くなったお父さんがよこになっていた。

「おとーさん、何で寝てるの?早くおうちかえろーよ。」

私は何回も何回も、そうやって父に問いかけていた。

私の横で、母は泣き崩れた。

「由亜、ちょっと出ようか。」

わたしは、父を残して部屋を出た。

「おかーさん、おとーさん起きないねえ。」

この言葉が、母にとってどんなに残酷な言葉だったのだろうか。

考えるだけで、胸が締め付けられそうになる。

「由亜・・・、お父さんね・・・。」

母は、必死で泣くのをこらえて

「お父さんはね・・・、遠いところへ行っちゃったんだよ。」

わたしはわけがわからなくて

「遠い所って?」

と母に問いかけた。

「お空より、もーっと遠いところだよ。」

「じゃあ、もう会えないの?」

母は、こらえていた涙をぼろぼろとこぼした。

「うーんと歳をとって神様が「いいよ」っていってくれたらきっとお父さんと会えるよ」

わたしは、これ以上母に問いかけをしてしまったら母はもっと泣いてしまう、と何となく

悟った。

それから二日たって、お葬式が行われた。

黒い服を着た人がたくさん来て、みんな泣いている。

花束もたくさんおかれて、おとーさんの大きな写真が飾られている。

お坊さんと言う人が、お経トいうものを唱えている。

わたしには、呪文にしか聞こえなかったけど。

「それでは、故人と最期のお別れです。」

最後?おかーさんはまた会えるって言っていたのに・・。

私はお母さんに連れられて、白くなったおとーさんのところへ行った。

おかーさんは、

「あなた・・、そうしてこんなに早く逝ってしまったの?」

と泣きながら言っていた。

わたしは、

「おとーさん、ずーっと先だけどあえるのたのしみにしてるよ!」

そのあとも、たくさんの人がおとーさんに一言ずついって帰って行った。

お母さんは、ずっとわたしの手を握りしめていた。