私、逢坂 莉央。
お父さんは逢坂コーポレーションの社長。
つまり、私は社長の娘。
「お嬢様、お迎えに上がりました」
黒のスーツの男性が運転席から降り、後部座席のドアを開ける。
「ありがとう、黒崎さん」
私の執事の黒崎さん。
イケメンで、優しくて、大人で私の自慢の執事。
「今日のこれからのご予定は?」
「今日は友達が遊びに来ることになってるから、客室の準備お願いできる?」
「かしこまりました」
黒崎さんの返事を聞くと、私は満足気に窓の外を見た。
家に着きベッドに寝転がる。
「今日も一日疲れたーっ。そろそろ着替えないと…」
私が立ち上がり着替えているとドアをノックする音が聞こえた。
「はい?」
「黒崎です。ご友人の美紗様と有紀菜様がお見えになりましたので客室にご案内しておきました。」
「分かった!すぐ行くって伝えといてもらえる?」
「かしこまりました」
私は制服をハンガーに掛け、上げていた髪を下ろして部屋を出た。
「お待たせー!」
「あ!莉央っ。相変わらず広いお屋敷だねー」
そう言って部屋を見回すのは美紗。
「うんうん!紅茶もクッキーも美味しいし!」
さっきから食べてばっかりなのが有紀菜。
「この紅茶は黒崎さん特製なんだよ!」
「へぇっ、さすが黒崎さん!」
「本当素敵よねー。黒崎さん何歳だっけ?」
「えっと…確か今年32歳…くらいかな?」
「マジ?見えない!!20前半くらいに見えるよ」
美紗のリアクションに思わず私は吹き出す。
「ははっ、それ、本人に言ってやりなよ」
「ね、ねぇ莉央…。お手洗い借りても良いかな?」
「あんた飲み過ぎなんだって!ったく、場所分かる?」
私は呆れ顔で言う。
「一回来た事あるから多分大丈夫!」
「そう、じゃあいってらっしゃい」
「うん、借りるねっ」
有紀菜が出て行った後、私と美紗はやれやれという感じで顔を見合わせた。
と、その時。
「キャーーーーーッ」
有紀菜の悲鳴が家中に響く。
私と美紗が急いで廊下に出ると、廊下に倒れている黒崎さんとそれに怯える有紀菜がいた。
「有紀菜!?ちょっと、どうしたの?黒崎さん!!」
私は有紀菜に事情を聞きつつ黒崎さんの名前を呼ぶ。
「分からない…。やっぱお手洗いの場所分からなくて、たまたま通りかかった黒崎さんに聞こうと思ったら…急に咳込んで倒れちゃって……」
既に有紀菜は半泣き状態だ。
「分かった。私は医師とお母さんを呼んでくるから、二人は黒崎さんを見てて」
「うん」
有紀菜一人だと心配だけど、美紗がいるから大丈夫だよね…。
私は急いで医師とお母さんを呼びに行った。
自分でも驚くくらい落ち着いているけど、内心は怖くてしょうがない。
このまま黒崎さんが…って思いたくなくても思ってしまう。
お願い、どうか無事でありますように…っ
私はそれだけをひたすら願った。