紳と話がしたくて、携帯で電話をした。
「もしもし。」
『ど?会えただろ?』
……余裕そうな声。
そんな紳に、聞きたいことがある。
「……なぁ」
『あ"?』
“中川さんのこと、好きなのか?”
………聞こうとしたが
“好きだ”と肯定されてしまったら、立ち直れなくなりそうだからやめておいた。
……情けない。
『なんだよ?』
「……紳、ちょっとだけ仕事してから帰ろうか。」
ふぅ、と息をつく。
「めんどくさいな…」という声を受話器越しに聞きながら
彼女の表情を思い出した。
俺の気持ちは、あの文庫本の表紙と同じ。
淡くて………まだ、蒼い。
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