勝手に緩む口元を片手で隠していると、小さく、でもはっきりとした声が聞こえてきた。





「宜しくお願いします。
……神崎先輩。」




その声がなんだか切なくて

「先輩」と呼ばれることがもどかしくて




「…ぅん。」



俺はそれだけしか返すことが出来なかった。


名残惜しくも、彼女の黒く長い髪から手を引くと

パチリと目が合った。




……そうか。

中川さんは、「俺」に呼び出されたんだから…何か用件があると思ってるのかもしれないな。



ったく、面倒なことをしてくれたもんだな……




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