手袋を外す
息を吹きかける
手をこする
指を動かす
こんなもの
ちょっとも温くならん
手袋をしまう
ポケットの奥に
差し出された君の手を
そっと握る
そうこれじゃ
温いのぉ
握った君の手に
力を込める
小さい手じゃのう
でも温いのぉ
掌を通して伝わったのは
君の思いと僕の気持ち
少しだけ近づいた
二人の距離
沈み行く夕日
燃える空
目に映る 赤
黄昏れる
陰り行く空
息を吐く 深く
心に灯す
命の明かり
日没からは人の手が必要
手を伸ばし
何かを掴みとる
手探りの 不安
灯された火
身に引き寄せた小さな火を
大切に守る
僕の呼び声
君は気付かない
僕の足音
君は気付かない
たとえ僕が君の耳元で
好き
と言っても
君は気付かない
僕は風
君に纏わりつく
僕は風
君の頬を撫でる
いつでも
どこでも
風が起こるたび
僕は君に恋をする
心の隅に転がったかけらに
気付かないふりして
目をつぶる
ねぇ
なんで?
つぶやきかけた言葉を
呑み込む
かけらを
あっちへやり
こっちへやりして
はまる場所を探し転がす
本当は適当な所に
おさめたい
ねぇ
やっぱり
気付いた不安は
確信となって
あたしの心の中から転がり出た
走る君を目で追う
ボールが渡る
君の手に
弾む音と軋む音
その先には
君の汗
ゴールに吸い込まれる
ボール
「一本目のゴールは
君の為に」
振り向いた笑顔に
胸が
きゅうっと
締め付けられた
頬染めて
恥らう乙女の恋よりも
声上げて
語り笑える恋がいい
手を繋ぐ度
心跳ねる恋よりも
触れる度
心温まる恋がいい
ドライブよりも
サイクリング
レストランより
家であなたとポテトチップス
痛っ
弾けて落ちた
栗のイガ
見上げると
それは栗の木
足元には
沢山の栗のイガ
そんなことにも気が付かない
上の空のあたし
弾けたイガから
栗の実をつまみ出す
ひとつ ふたつ
みっつ よっつ
目が覚めた瞬間
我に返る
聴いてみたい
もう一度 君の声を
触れてみたい
もう一度 君の肌に
そうすれば
戻れるかな
楽しかったあの頃に
記憶の底に沈めたはずの
幸せの思いを
五感をもって呼び覚ませ
そんな幻想
そんなまやかし
思い出は
大切に記憶の底へ沈めておけ
それが定説
それがいましめ
記憶の海を
幸せで満たせ
それが前進
それが未来へのステップ
その人の
その人であるが故の
行い
想い
言葉
その一番底にある
衝動
感動
御霊
その人を形造るもの
心
それは根源的な
善と悪
明と暗
愛と憎
全てを内包した
心
パンドラの箱は
開けられた
その罪を贖うのは
我々全て
心を研ぎ澄ませ
世界を見よ
心を開け
己を見よ
贖いは心の内に在り